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APT WomenAcceleration Program in Tokyo for Women
東京都女性ベンチャー成長促進事業APT Women運営事務局03‒6213‒2000

海外展開ストーリー

伝統を守りながらも柔軟な発想で、新しい小倉織を発信する 伝統を守りながらも柔軟な発想で、新しい小倉織を発信する

福岡県北九州市小倉の伝統工芸「小倉織(こくらおり)」の生地の製造や販売を手がける、小倉織物製造の築城弥央さん。400年続く歴史と伝統技術を原点に、現代にも愛される新しい小倉織を世界に発信されています。生地の生産を通じて考えたものづくりのあり方や、伝統技術の継承についてのお考えを伺いました。

高いデザイン性と機能性を兼ね揃える小倉織

福岡県の北九州市周辺で江戸時代初期から織られていた「小倉織」の特徴は凛とした縞の美しさと、生地のなめらかさ。経糸が一般的な織物の約3倍もの密度で織られており、「槍をも通さぬ」と言われたほどの丈夫さも特筆すべきポイントのひとつです。かつては武士の袴や帯として使われていましたが、私たちのブランド「小倉縞縞」では洋服やバッグ、最近ではマスクなどのアパレル分野の商品を展開しているほか、インテリア、家具などに至るまで幅広く活用されています。

小倉織は江戸時代から袴などに使用され、明治時代には全国の男子学生服の生地にも採用されていました。しかし非常に手間のかかる製法に対応できる職人の数は限られており、さらには繊維業の衰退や地元北九州市の産業が重工業化し、全国では劣化した粗悪なコピー品が出回ったことなど様々な原因により、昭和初期の戦時下には一度製造が途絶えてしまった過去があります。
1984年に私の伯母が骨董店で見つけた一片の端布を基に小倉織を手織りで復元・再生。2007年には母と私自身で、機械織による小倉織ブランド「小倉縞縞」を立ちあげました。しかし、地元の小倉では機織り工場が途絶えてしまっていたため、市外の織物工場に外注して製造してもらっていました。
展開が進むにつれて海外からの引き合いも多くなり、多品種小ロット、オリジナルデザインなどの多種多様なオーダーに応えることのできる製造ラインが求められるようになりました。さらに、そのままではまた技術が途絶えてしまう危機感もあり、何よりもより多くの地元の人に知っていただき使っていただくために、機械織りによる小倉織の開発に取り組み、2019年2月に地元小倉に工場を新設。現在は幅広いオーダーに対応できるようになりました。

ブランドを立ち上げてからは、少しずつ百貨店などで商品の販売を進めていましたが、販路をさらに開拓し、東京からの全国展開や世界に向けての発信を考えるようになりました。そこで首都圏との繋がりを求めて、APT Womenに応募。福岡県内だけではなかなか出会えなかった方との交流や、メンターの方との面談を通じて、次第に自分の考えも整理されていきました。販路開拓にもつながり、今後のビジネスの幅が広がったように感じています。

2016年:ミラノサローネ

新しい日本のものづくりを提唱する

製造業、とくに伝統工芸分野での後継者不足は喫緊の課題だと感じています。しかし工夫次第では、メーカーもまだまだ新しい道が開けるのではないかと考えています。
もともとは生地を商品に加工してから販売していましたが、今では多様なニーズに応えるために、生地自体の販売も行っています。そういった取り組みから、小倉織をテーマにしたホテルの内装デザインや企業のノベルティ作成など、自分たちでも想像していなかったような依頼をいただくことも増えてきており、とても嬉しく思います。伝統を大事にしながら、そこに固執することなく、相手のニーズに合わせて生地を提供できる製造体制を備えたことで、様々なチャンスをつかむことができてきているように感じています。

仕事をする上で大事にしているのは、とにかく行動すること。「何かこの場所にヒントがあるかもしれない」と感じたら、すぐにそこに行き、様々な方に直接ヒアリングしています。過去には、ミラノ・サローネやメゾン・エ・オブジェなど海外の名だたる展示会にも出展しました。現地でも世界共通の縞模様への親和性は高く、手織りによる草木染の自然の色への評価も高く、多くの方に注目していただきました。
そんな中で「もう少し大きいサイズがほしい」「テーブルクロスとして使用できないか」など、生の声を聞き、国や文化はもちろん、使用する方のニーズに合わせた改善案をすぐに製造にフィードバックしています。

こういった行動を積み重ねながらメーカーとしての新しいあり方を多くの方に知ってもらうことで、日本のものづくりを元気に盛り上げていきたいです。

私のリラックス方法

favorite私のリラックス方法

自然を楽しむのがとても好きです。山に登ったり、スキューバダイビングをしたりします。海のなかで、様々な生物の色と出会える瞬間がたまりません。そういった意味では、趣味に没頭している最中でも、ふと仕事のアイディアにつながるシーンもありますね。

福岡県北九州市の伝統工芸である小倉織の独自性・未来を創造 福岡県北九州市の伝統工芸である小倉織の独自性・未来を創造

柔軟な発想で歴史ある事業を継承する

小倉織は約400年という長い歴史をもつ伝統工芸です。その長い歴史のバトンを受け継ぐ者として心がけているのは「伝統工芸を後世に残す」という使命感をもちつつ、新しい発想を恐れずに取りいれていくこと。従来は難しいとされていた小ロットでの生地の生産に挑戦したことも、その一例です。結果的に色々な方との取引にもつながり、小倉織のもつポテンシャルの高さを感じました。また多様なアイディアを出すために、頭を柔らく使って色々な企画を提案しています。

伝統工芸だからといって、これまでと同じことをしていては更なる発展は難しい。だからこそ歴史の一部を担うという責任感をもちつつ、進化した小倉織の発信を目標にしています。伝統ある小倉織の美しさを継承しながらも、新しい時代の小倉織を広めていきたいですね。
将来的には、各地で途絶えてしまった伝統的な生地の再生や生産などにもチャレンジしていきたいです。

message起業家への応援メッセージ

チャレンジしたいことがあれば、まずはどんな小さなステップでも良いので挑戦してみてください。考え過ぎてしまって行動にうつせないのは、とてももったいないと思います。ある程度のリスクを覚悟しながらも、自分を守りすぎず、思い切って挑戦してみてください!

築城 弥央 氏

小倉織物製造株式会社 代表取締役築城 弥央 氏

福岡県北九州市出身。大学在学中に台湾へ留学し、台湾日系企業へ就職。海外で暮らす中で改めて日本文化の奥深さを感じ、帰国後、母と共に機械織による小倉織ブランド「小倉縞縞」を立ち上げる。2018年7月小倉織物製造株式会社設立。プライベートでは一児の母。