APT Women ACCELERATION PROGRAM IN TOKYO FOR WOMEN

受講生

一般社団法人WheeLog 織田友理子

一般社団法人WheeLog織田友理子

みんなでつくるバリアフリ-マップアプリ「WheeLog!」の開発・運用

WheeLog!(ウィーログ)について教えてください。

WheeLog!は、みんなでつくるバリアフリーマップアプリです。スマホで写真を撮影して”スポット投稿”するだけでバリアフリーに必要な情報を共有することができます。トイレやエレベーター、レストラン、ホテル、駐車場など10項目について投稿する仕組みになっています。さらに、車いすで移動した軌跡を”走行ログ”として地図上に線を引くこともできます。

たとえば新宿の地下のとある通路にはスロープがあります。普通、スロープがあるんだからその先も行けるんだろう、と想像しますよね? しかし、いざその先に行ってみるとエスカレーターと階段しかなくて、実は車いすユーザーは行き止まり。WheeLog!にはこのような情報も掲載できるので、行けると思っていたのに実は行けない、逆に、本当は行けるのに、行けるかどうかがわからないから行かない、ということを避けることが将来的にできるようになります。また、”走行ログ”を参考にして移動経路を考えることもできます。

さらに、WheeLog!にはバリアフリーマップがあるだけではなく、コミュニケーション機能も備わっています。たとえば「池袋の地下は車いすだと大変」「隠れエレベーター情報を持ってます」なんていう”つぶやく”機能があるんですね。このような健常者と車いすユーザーとのやりとりも心温まるものです。心のバリアフリー醸成のためにも、これからもっと活性化させたいと思っています。

従来も行政などがマップを公開している事例はあるかと思います。そちらとの違いを教えてください。

たしかに今までにも公開されている情報はあります。しかし、1つ1つの検索が大変だったり、情報が更新されず古いままで信用性が低かったり、現地に行かないと情報が手に入れられなかったりしました。また行政ですと、不確実な情報や主観的な情報は公開しにくいように思うんですよね。でも、私たち車いすユーザーからすると、ユーザーの主観情報でも十分役に立つんです。

WheeLog!はどなたでも投稿できますが、やはり車いすユーザだったりその近親者の方が使用して下さることが多く、情報に現場感があるのも強みになっています。現在の投稿数1位は台北在住の健常者の方です。

どうしてWheeLog!を開発されたのですか?

私には息子がいます。私が車いすであることが原因で息子にできないことがあっては悲しい。ある時、海に行きたいと思ったんです。海ってあまりバリアフリーなイメージはないのですが、調べてみたら、茨城県に行ける海がありました!

また一昨年ケニアのサファリに行った時には、車いすユーザーでも使えるトイレがなかったら困るので、前日から水分摂取を我慢していました。でもいざ行ってみたらトイレは普通にあって...事前情報があればこんなに心配しなくてもよかったですよね。結果的に私は行ったから良かったのですが、もしかしたら情報がないために行くこと自体を断念した方がいたかもしれません。

このように知ってさえいれば、車いすユーザーでも、障がいがあっても、行けるようなところはたくさんあるんです。だったらそのためのマップを作ろうと閃きました。かといって当然私が一人で日本全国ひいては世界のバリアフリー情報を投稿することはできません。そこでWheeLog!を開発することにしました。

今後の展開を教えてください。

もちろん足りないところがあるからWheeLog!の活動をしているわけですが、日本はそれでも諸外国に比べると意外とバリアフリーが整いつつあります。石畳も少ないですし、道路の段差も大体は超えられるようになっていますし、多目的トイレもたくさんあります。でも海外の方はそんなイメージはあまりないのではないでしょうか。日本の状況をあまりわかっていただけていないように感じています。

2020年にはオリンピックが開催されるので、世界中の多くの方が日本のことを調べるでしょう。その中には当然バリアフリー環境が必要な方がいて、その方々に、「日本のここは大丈夫なんだよ」と伝えたいんです。それもあって、WheeLog!の英語版を作りました。海外の方が来日される際の参考になれば嬉しいです。また、これからバリアフリーに本腰を入れていく途上国の参考にしていただきたいです。

車いすユーザーだから行けない、ではなく、「行った人がいるんだから私も行ってみよう」という、ポジティブな社会を作っていきたいと思っています。

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